「これ、いいな」と思ったけれど、値札を見てそっと棚に戻す。
「もっと安い代用品があるから、これでいいや」と自分を納得させる。
私たちは買い物をするとき、つい「価格」という数字だけで判断してしまいがちです。
しかし、当ラボの視点から言えば、価格だけでモノの価値を測るのは、地図を持たずに航海に出るようなものです。
一見すると「浪費」に見える高い買い物も、その本質を見極めれば、人生の幸福度を底上げする「最高の投資」に変わります。
今回は、満足度から逆算する「投資価値」の考え方について、述べたいと思います。
「価格」と「価値」を切り離して考える
まず整理すべきは、「価格(プライス)」と「価値(バリュー)」は全くの別物であるということ。
- 価格: そのモノを手に入れるために支払う「一過性のコスト」
- 価値: そのモノがあなたの人生にもたらす「継続的な恩恵」
例えば、10万円のワークチェアを「高い」と感じるか「安い」と感じるか。
もしあなたが毎日8時間その椅子に座り、腰痛から解放されて集中力が10%向上するとしたら、その椅子は十分に元が取れる投資になります。
一方で、1,000円の便利グッズを買っても、一度も使わずに引き出しの奥で眠らせてしまうなら、それは100%の「浪費」です。
私たちが目指すべきは、支払った金額を「使用回数」や「生み出される時間」、そして「心の安定」で割り算したときの実質的なコストを最小化することなのです。
投資価値を測る「3つの評価軸」
モノを導入する際、当ラボでは以下の3つの評価軸で、その「投資価値」を判定しています。
① 「接触時間」の長さで測る
最もシンプルな計算式は「価格 ÷ 使用時間(回数)」です。
毎日使う寝具。
毎日触れるキーボード。
毎日履く靴。
これら「身体との接触時間が長いモノ」への投資は、一回あたりのコストが劇的に下がるため、非常に効率の良い投資になります。
逆に、年に一度しか使わないドレスやキャンプ用品に多額を投じるのは、慎重になるべきです。
人生の「土台」となる時間に使うモノにこそ、リソースを集中させる。
これがラボ流の資源配分です。
② 「負の解消」の度合いで測る
その買い物によって、どれだけの「不快感」や「ストレス」が消えるかを考えます。
「この掃除機なら、重くて億劫だった掃除が楽しくなる」
「この乾燥機付き洗濯機なら、天気を気にするストレスが消える」
こうした「負の感情の削減」は、私たちの脳内バッテリー(ウィルパワー)の消耗を防いでくれます。
浮いたエネルギーを他の生産的な活動に回せることを考えれば、それは立派な資本投資と言えます。
③ 「セルフイメージ」への影響で測る
モノは単なる道具ではありません。
それを持っている自分をどう感じるか、という「セルフイメージ」に強く作用します。
妥協で選んだモノに囲まれていると、無意識のうちに自分自身を「妥協が似合う人間」だと定義してしまいます。
逆に、背筋が伸びるような上質な道具を持つことは、「自分を大切に扱う」という訓練になります。
このマインドセットの変化がもたらす長期的なリターンは、計り知れません。
「安いから買う」という罠の正体
多くの人が陥りがちなのが、
「セールだから」
「安いから」
という理由で意思決定をしてしまう罠です。
これは、自分の価値基準を「自分」ではなく「価格表」に委ねてしまっている状態です。
安いモノを買って失敗したとき、人は「安かったからいいや」と自分を慰めます。
しかし、失ったのはお金だけではありません。
そのモノを選び、購入し、家に置き、そして最終的に処分するという「時間と意思決定のエネルギー」を確実にロスしているのです。
当ラボでは、「10%の安さを求めて、20%の満足度を捨てない」というルールを推奨しています。
本当に欲しいものが予算オーバーなら、妥協して安いものを買うのではなく、「お金が貯まるまで買わない」という選択肢を持つ。
これこそが、長い目で見たときの節約であり、充実への近道です。
投資としての「経験」への視点
モノ選びのルールと同様に、当ラボでは「経験」への投資も重視しています。
形に残るモノではありませんが、旅や学び、美味しい食事といった経験は、あなたの記憶の一部となり、思考の深みを養ってくれます。
モノの価値は時間の経過とともに減価(劣化)していきますが、経験から得た知見や感性は、時間の経過とともにあなたの中で発酵し、複利で価値が増えていきます。
「この買い物は、私の未来の成長につながるか?」
この問いを自分に投げかけることで、浪費と投資の境界線が鮮明に見えてくるはずです。
今回の課題:あなたの「精鋭リスト」を作る
今日、あなたの周りにあるモノを一つ眺めてみてください。
それは、支払った金額以上の価値を、今のあなたに提供してくれていますか?
もし「イエス」と言えないモノが多いのであれば、次の買い物からは「価格」ではなく「満足度」から逆算してみてください。
1500円のランチを「高い」と思うのではなく、「午後のパフォーマンスを最大化するための燃料代」と捉え直してみる。
数万円のペンを「浪費」と思うのではなく、「生涯、書く喜びを感じ続けるための相棒」と定義してみる。
あなたの人生を構成する一つひとつの要素を、「消費」から「投資」へと変換していく。
その積み重ねが、10年後のあなたを、今よりもずっと身軽で、自由で、充実した場所へと連れて行ってくれるのです。
